スタッフブログ

遺言について少々4

前2回で述べた事例において,もし,Aさんが遺言を残しておいたらどうなったでしょうか。ここでは,Aさんは,Bさんに土地・建物を,Cさんに預金を相続させるという遺言を残したとします。土地・家屋の価値は2000万円だったとしましょう。預金の額は前回の例通りに1000万円だったとします。この場合,遺言通り,土地・家屋はBさんが相続します。預金はCさんが相続します。土地・建物についての相続登記,金融機関に対する預金払戻等の手続は,基本的に,前者はBさん,後者はCさんが,単独でできます。それで相続手続は終わりです。愉快ではない話し合い等をする必要はありません。速やかに相続問題が片付きます。
なお,この例だと,Cさんがかわいそうだと思う方もいるかもしれません。確かに,金額だけを見るとその通りですね。ただ,もともと,Aさんの遺産はAさん自身の財産だった訳ですので,Aさんの最終意思によって分け方が定まることは不当とは言えません(ただし,遺言で定められた遺産の分け方があまりに偏ったものであった場合には,それに不満のある相続人は,遺留分侵害額の請求という手続をとることができます。)。(続く) 長澤

遺言について少々3

前回記した事例において,Bさんは土地・家屋を相続したい,Cさんは預金を相続したいと考えた場合,一見,問題は生じないように思えます。確かに,土地・家屋の価格と預金の額が釣り合っていると,Bさん,Cさんとも納得しているならば,Bさんは土地・家屋を相続,Cさんは預金を相続ということで丸く収まりそうですね。けれども,Bさん,Cさんのどちらかが,土地・家屋の価格と預金の額が釣り合っていないと考えた場合はどうでしょうか。例えば,預金の額が1000万円だったとします。この状況で,Bさんは土地・家屋の価値は1000万円と考えている,Cさんは2000万円と考えているといった場合,Cさんとしては,清算のため,BさんからCさんへ500万円を払ってもらいたいと考えるでしょう(このような清算の趣旨で授受される金銭を「代償金」といいます。)。この場合,代償金をやり取りする必要があるのかないのか,あるいはいくらやり取りするのが適切なのかを巡って,BさんとCさんで揉め事が生じてしまいます。(続く) 長澤

遺言について少々2

うちの家族,親族は仲が良いので,相続などで揉めないよと思う方も多いかもしれません。ただ,本当に揉める危険性がないのか,家族,親族に揉め事の種を残してしまうことになってしまわないのかについては一考の必要があるのではないでしょうか。分かりやすく,親子の相続の例でお話します。Aさんが遺言を残すべきか考えているものとします。Aさんのつれあいは既に他界しているものとし,Aさんには,Bさん,Cさんという2名の子がいるものとします。また,Aさんの財産としては,Aさんが住んでいる土地・家屋と,預金があったとします。かなり単純な事例ですよね。この様な単純な事例でも,遺言が残されていない場合,揉め事が生じる危険性はあります。例えば,Bさん,Cさんとも,土地・家屋を相続したいと考えた場合,どちらがそれを相続するかで揉め事が生じることは容易に想像できるでしょう。なら,二人の共有にすればいいと思う方もいるかも知れませんが,共有という状態は,将来,その土地・家屋を売るにしても,貸すにしても,あるいはどちらかが住むにしても,逐一,Bさん,Cさんの二人で話し合わなければならない状態ということですので,結局,揉め事を先送りにしているだけなのです。相続という機会が生じた以上,そのときにすっきりと解決をしてしまうことが合理的です。(続く) 長澤

遺言について少々1

「遺言」という文字は,通常「ゆいごん」と読みますよね。ただ,法律関係の仕事をしている人達は,少なくとも仕事の上では,これを「いごん」と読みます。いわば慣習な訳ですが,由来は知りません。あしからず。。。ひとまず,「遺言」のことを「いごん」と読む人がいたら,そっち(法律)方面の人かもという判断はできますね。
それはさておき,以下,遺言についてのお話を少々。終活といった言葉を聞くようになって暫く立った今,遺言に対する心情的な抵抗は,以前よりは少なくなったのかなと思います。ただ,やはり,縁起でもない等感じる方もまだまだ多いでしょう。しかし,遺言を残しておくことは,相続が発生したときの紛争の予防に役立ちます。自身が亡くなった後,親族間で揉め事が生じてしまうことは,望ましいことではないはずです。その様な事態を避けるため,遺言を残しておくことは十分に検討に値するでしょう。(続く) 長澤

1

ページのトップへ