資金繰りが厳しい、金融機関への債務の支払ができない、さらには給与の支払ができないなど、昨今の厳しい経済情勢や金融円滑化法の廃止によって、今後の会社経営をどうしようかお悩みの経営者の方も多いかと思います。
資金がショートしてしまう、あるいはそこまではいかなくても、赤字が積み重なっていてこのままでは経営が危ないと考えた場合、真っ先に思いつく手続は破産だと思います。ただし、破産というのは一般的には事業の終わりを意味します。せっかく築いてきた事業を簡単に終わりにするよりも、まず再建の可能性を検討するべきでしょう。
当事務所では、厳しい経営状況にある会社の再建をお手伝いすることができます。
では、どのような方法で再建していくのでしょうか。恐らくほとんどの方が耳にしたことがある言葉だと思いますが、民事再生という手続の利用です。よく報道などでは民事再生申請という言葉が使われることが多い、その手続になります。
もっとも、報道される民事再生案件は、そのほとんどが大企業に関するものです。中小企業の方には、民事再生は自分たちには無関係であると考えられているかもしれませんが、決してそんなことはありません。中小企業であっても、民事再生手続を利用した企業再建の可能性はあります(もちろん、どんな場合でも再建できるという無責任なことをいうつもりはありません。)。
ここでは、民事再生手続の概要とどんな会社が民事再生に適しているのかということを説明したいと思います。
民事再生は、企業の再建を目指した手続です。最終的に企業が消滅する破産手続とはこの意味で全く逆の手続です。
また、もう一つの特徴として、DIP型の手続であるということです。DIPというのは従前の経営者による事業経営が原則という意味で、この点は同じ再建型の手続である会社更生と異なります(会社更生の場合には裁判所が更正管財人を選任し、更生管財人が経営にあたります)。
なお、会社更生については、手続が煩雑であり、大企業向けの手続といえますので、このサイトでは特に説明はいたしません。
民事再生を行う場合、最終的なゴール、再建の方法をどのように定めるかという意味で、大きく分けて2つのやり方があるといえます。
一つは、自主再建です。あくまで自分の力だけで再建を図る方法です。
もう一つは、スポンサーによる支援を受ける方法です。民事再生中の企業はどうしても資金繰りが苦しくなりがちですし、スポンサーの存在はありがたいものです。
「スポンサーが存在するならば、民事再生など不要ではないか」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。民事再生手続によって会社の債務を圧縮できるため、スポンサーにとってお金を出しやすい状況が作れるともいえるのです。このあたりは、業種やブランドによっても変わってきます。民事再生手続によるマイナスイメージと圧縮できる債務の額を考えて、どちらを取るかとう判断になると思います。
民事再生を行う場合の大事な注意点は、資金繰りです。民事再生の申立を行うと、新たな融資は受けにくくなります。また。金融機関は手形割引にも応じないこともあります。民事再生会社向けの融資を行っている会社もありますが、通常の融資と比較して利率が高いことは否めません。
したがって、少なくとも再生計画の認可までの、資金計画が重要になります。再生中であっても従業員の給与等は払わなければなりません。
どうしても資金の枯渇を免れないのであれば、残念ながら、破産を選択すべきといえます。その意味で、民事再生成功の鍵の一つは早めの相談、早めの申立が肝要となります。
申立後の事業継続を考え、手持ち資金が最大になるようにする必要があります。このためには資金繰り表を作成しておくことが重要になります。
また、多くの会社は銀行からの借り入れがあり、借入をしている銀行に預金をしている場合が多いと思います。預金が借入銀行の口座にあるまま申立をしてしまうと、銀行から相殺されてしまいますので、それを回避する必要があります。
民事再生の申立の準備は一般的にいってかなり大変です。用意する書類も相当多くなります。
また、裁判所によっても求められる書類が異なる場合があります。
さらには、裁判所に提出する書類以外にも取引先に送付する書類等の準備をする必要があります。また、申立後にどのように行動するか(従業員への説明や取引先・債権者への説明等)も事前に決めておく必要があります。
当事務所では民事再生のご依頼を受けた場合には、チームを組んで申立や申立後の動きがスムーズに行えるよう取り組んでいきます。
裁判所に民事再生の申立を行うと、それまでに発生した債務の弁済は禁止されます(正確に言うと申立から開始決定までの間と、開始決定が出た後では法の規定は若干異なります)。
ただし、少額の債務については例外として弁済が認められる場合もあります(会社の規模や資金繰り等によって変わってきます)。
民事再生法の定める要件(民事再生法第25条)を満たしていれば、裁判所によって民事再生手続の開始決定が出されます。
開始決定が出ると、債権届出期間や、認否の期間、財産目録や再生計画案の提出期限、債権者集会の期日が決定されます。
ここから、どのように事業を再建していくかが勝負になります。先にも述べましたが、再生の方法には色々なストーリーが考えられます。その中で、会社にとって最も適した方法を採っていく必要があります。また、取引先との協議や債権者との交渉も必要になってきます。民事再生を申し立てたことによって従前の取引が何も出来なくなっては事業の継続は不可能です。債権者の支持を得られなければ最終的に再生計画案は否決されてしまうことになります。
民事再生を申し立てた会社は、債権者集会に向けて再生計画案を策定していくことになります。再生するには、会社の何が問題であったのか、どこか経費を削減することはできないか、場合によっては事業の一部を閉鎖してスリム化することも必要になるかもしれません。また、従業員の解雇も必要になるかもしれません。
スポンサーとの協議も慎重に行う必要があります。特に、複数のスポンサー候補が存在する場合には、本当に再生に役立つのはどの会社なのかという判断をしていく必要があります。
再生計画案をどのように策定していくかはとてもここに書ききれるものではありませんが、あらゆる事情を考慮した上で策定しなければなりません。
また、再生計画案では、再生債権の弁済率・弁済方法を決めなければなりません。この弁済率は仮に破産した場合の配当率と比較して、高い弁済率である必要があります。そうはいっても、破産した場合の配当率は仮定の数字になるので、どのように算出するかはかなりの経験と知識が必要になります。また、再生債権について免除があると、免除益が発生したり、あるいは資産売却を行う場合も、簿価が低い資産だと売却益が発生する場合もあります。弁済計画を立てる上では、税金には要注意です。
最後に、再生計画の認可には債権者集会の議決が必要になります。
会社としては、可決に向けての対応、特に重要な債権者には事前に説明する機会を設けるべきでしょうし、できれば事前に賛成票を確保しておきたいところです。
ただ、どうしても、文字での説明には限界があります。事業は生き物です。どんな事業でも全く同じということはありません。本当に、その会社に相応しい再建方法を考えるに当たっては、どうしても、直接お話をお伺いして、個別具体的に考えていく必要があります。
それから、最後にもう一度大事なことを書いておきます。民事再生手続を円滑に進めるためには、早めの決断・準備が必要です。少しでも、気になったら遠慮なくまずは相談してください。弁護士には守秘義務がありますから、相談をしたからといって、その話が漏れることはありません。タイミングとして遅すぎるご相談の場合には、事業の再建を望んでいたとしても、破産という選択をせざるを得ない場合があります。まずは、早めのご相談をお勧めします。