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成年後見制度の趣旨

日本では、人は20歳になると成年と扱われることは御存知でしょう。

原則として、成年には「行為能力」というものが認められ、契約等を、完全に有効なものとして行うことができます。

しかし、成年とはいえども、中には、正常な判断能力を欠く方もいます(高齢による場合もあれば、事故や病気による場合もあるでしょう。)。

その様な方が、本人で契約等を行うとなると、合理的判断ができない結果、その方が害される危険があります(例えば、必要もない物を買ってしまう、自分の財産を不当に安く売ってしまう等)。

そこで、その様な方の保護のため、法律上用意されている制度が、成年後見の制度です。

成年後見と類似する制度として 保佐、補助の各制度があります(本人の判断能力の程度の違いにより使い分けられます。)が、以下では、成年後見制度について、御説明を致します。

成年後見人の役割

成年後見制度の下、「成年後見人」という立場の者が、いわば本人の保護者として、生活、療養看護及び財産の管理に関する法的な事務(契約等)を行うことになります。これらの事務を行うために、成年後見人には包括的な代理権が認められています(親権者が未成年である子を代理して契約等を行うことをイメージして頂ければ分り易いと思います。)。これにより、判断能力の不十分さから生ずる、本人の不利益が防止される訳です。

ところで、皆様の中には、それならば、わざわざ成年後見制度を使わずとも、家族等が本人のために法律行為を行えばよいではないかと思う方もいらっしゃると思います。しかし、成年後見人には、先程述べた代理権というものが認められているのに対し、単に家族等であるというだけでは、この代理権は認められないという点に注意する必要があります。

例えば、本人が介護施設に入居するために、本人が所有している土地、建物を売る必要が生じた場合でも、家族等は、「○○(本人)代理人△△(家族等)」として売買契約を行うことはできません。仮に、その様な売買契約を行ってしまったとしても、土地、建物は、相手方には移転しませんし、また、その場合、売買契約を行った家族等には、相手方から損害賠償請求を受ける危険が生じてしまいます。

日常的な買い物程度のことはともかく、不動産売買、遺産分割等、本人のために重大な行為を行う必要がある場合には、成年後見制度を利用する他ないと考えておきましょう。

法廷後見と任意後見

成年後見制度といっても2つの種類があります。一つは法定後見制度であり、もう一つは任意後見制度です。

※「法定」「任意」といった言葉は分かりづらいと思います。ここでは、2つのパターンの制度があると御理解頂ければ十分でしょう。

法廷後見制度

問題が起きてから後に手続を行うパターンの制度と言えます。

例えば、既に正常な判断能力がない程度に認知症が進行してしまっている場合や、交通事故に遭い、突然意思を示すことができなくなってしまった場合等には、この制度を利用することになります。

この制度では、誰を後見人とするかは、家庭裁判所が判断します。

任意後見制度

①と対比すると、問題が起きる前に手を打っておくパターンの制度と言えます。

この制度を利用する場合には、予め(正常な判断能力がある段階で)、御本人が、いざという時に後見人となってもらう人との間で、「任意後見契約」という契約を結んでおきます。

即ち、①とは異なり、いざという時に誰を後見人とするかを、御本人が決めておくことができるのです。また、その人に対し、どの様に後見人の仕事をしてもらいたいか(例えば、もし介護施設に入るとしたら、どこの施設に入りたいかなど)、希望を伝えておく機会もある訳です。

自分の意思ができるだけ尊重されますので、いざという時についての不安、心配はかなり軽減されると思います。

任意後見制度の例

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